経結膜ハムラ法について解説いたします。
この治療がどのようなものかを理解し、ご自身にあった治療かどうかを判断する一助になれば幸いです。
経結膜ハムラ法や裏ハムラ法は通称で、より正しくこの術式を表現する場合は経結膜的眼窩脂肪移動術と言います。(ハムラというのはハムラ法を開発した医師の名前です。)
下まぶたは加齢とともにふくらみを生じ、俗に目袋と言われる状態になります。このふくらみの正体は眼窩脂肪という脂肪です。
また、目袋の下の部分にクマが生じますが、クマの部分はくぼんでいることが多く、このくぼみを瞼頬溝(tear trough)と言います。
ハムラ法は、膨らんでいる目袋の脂肪(眼窩脂肪)を切除せずに、下方のクマの部分(瞼頬溝)に移動させることを特徴とする手術方法です。経結膜的というのはこの操作をするためのアプローチを皮膚側からではなく裏側の結膜側から行うということを意味します。
元々のハムラ法は結膜側からではなく皮膚側を切開して行う術式でしたが、結膜側よりアプローチする方が多くの利点があるため、現在のところ弊院では経結膜法を標準的術式として採用しております。
この手術では具体的には以下の操作を行います。
(1)下まぶたの結膜側を切開し、
(2)眼窩脂肪を眼窩下縁より5~8mm下の骨膜に縫合固定します。
この手術では、皮膚を切開しないため傷ができません。
また、脂肪を切除しないため、下まぶたが落ちくぼむこともありません。
この手術をすることにより、下まぶたの凹凸がなくなり、見た目を大きく改善させることができるでしょう。
この手術のポイントは眼窩脂肪の移動にあります。
目袋がふくらんでいるのだから単に脂肪を切除してしまうという治療では、クマの部分は改善しないばかりか通常は悪化します。単純な脂肪切除では目の下全体が落ちくぼむ結果となってしまうからです。また、クマも改善しません。
アプローチ方法に違いがあります。
通常のハムラ法では皮膚側からアプローチするのに対して、経結膜ハムラ法では下まぶたの裏側、結膜側からアプローチします。
この方法で治療した場合、皮膚に傷ができないため、その分ダウンタイムも短くてすみます。
20代~40代の比較的若年者は皮膚の余りがほとんどないため、皮膚側を切開する方法で行うメリットはなく、経結膜ハムラ法が適しています。
経結膜ハムラ法では、手術中に術者が確保できる視野が非常に狭くなり、手術操作も行いにくくなります。そのためこの術式を行うには熟練を要します。当然この部位の解剖を熟知した医師が行わなければ良い結果が得られません。
経結膜ハムラ法は皮膚の余りのない若年者に特に良い適応がありますが、それより年齢の高い方にもおすすめできる手術方法です。
下まぶたの加齢性変化の中で皮膚の余りというのは、実はそれ程大きな部分を占めません。眼窩脂肪の突出と瞼頬溝という凹凸を改善することだけでで、おおむね満足のいく仕上がりが得られることが多いです。
また、高齢者の方は下まぶたの緊張が緩くなっていますので、皮膚側を切開しないことで外反のリスクを避けることができます。
美容外科の発展の道のりでクマ治療の行き着いた一つの答え、それが経結膜ハムラ法です。年齢を問わず幅広い適応があるものと考えています。
脂肪が突出している部分、くぼんでいる部分をマーキングしておきます。
切開部分に局所麻酔薬を注射していきます。
無痛での手術を希望の方や術中は眠っていたい方は静脈麻酔での手術も可能です。
(1) 結膜側(下まぶたの裏側)の瞼板下を切開します。
(2) 眼輪筋という筋肉の下を眼窩下縁まで剥離します。さらに下方に頬骨の骨膜上を約5mm~1cm程度剥離します。
(3) 眼窩隔膜と眼窩脂肪を眼窩下縁より約5mm~8mm下の骨膜に縫合固定します。最後に切開部を極細の吸収糸で縫合します。
手術時間 |
約1時間半。 |
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麻酔方法 |
点眼麻酔、局所麻酔。 静脈麻酔を併用すれば無痛で行うことが可能です。 |
ダウンタイム |
1週間程度の腫れ。 |
術後の診察 |
翌日にテープ圧迫の除去。2週間後、1ヵ月後、3ヵ月後に適宜診察を行います。 |
メリット |
目袋、クマが一度に改善し、すっきりした下まぶたになります。 効果は半永久的です。 皮膚を切らないので傷ができません。 |
デメリット |
結膜側からアプローチするため、目の横幅が小さい方は技術的に難しい場合があります。 |
その他 |
目の下のクマや目袋が同時にスッキリすることで若々しい目元が得られます。 |